市会議員「ひろみだより」

日本共産党生駒市議会議員 竹内ひろみ活動報告

2月18日竹内議員報告(図書会館にて)

生駒市の福祉施策について

1.生駒市をとりまく経済情勢 (2010年代以降)
2001年に発足した小泉内閣は、「構造改革」を加速。「不良債権処理」の名で中小企業つぶしをすすめ、03年にはリストラをすればするほど減税をする「産業再生」法を延長・改悪して大企業のリストラを後押し。04年には派遣法を改悪し、製造業への派遣を解禁。派遣労働者労働災害の激増、ネットカフェで寝泊まりする日雇い派遣の若者は「働く貧困層」の象徴となります。

2008年後半、米国の金融危機に端を発した景気悪化を口実に、製造業を中心に大量の「派遣切り」「期間工切り」を始め、最大の社会問題に。

小泉内閣社会保障費の抑制方針−
2002年度から毎年社会保障費の自然増分から2200億円(初年度は3000億円)削減。
抑制の対象は医療、介護、年金、生活保護社会保障のあらゆる分野に及び、庶民への押しつけの結果、「生きること」自体が脅かされる実態が広がります。
 
国民の負担増・給付減−7年間で50兆円近くに
2002年度 老人医療の窓口負担増
2003年度 健保窓口負担3割化、年金マイナススライド、介護保険料引き     上げなど
2004年度 所得税配偶者特別控除廃止、厚生年金保険料引き上げなど
2005年度 住民税配偶者特別控除廃止、国民年金保険料引き上げ、介護     保険ホテルコスト導入
2006年度 定率減税半減、高齢者の住民税増税障がい者の自己負担引     き上げなど
2007年度 定率減税廃止、生活保護母子加算廃止
2008年度 後期高齢者医療保険制度の創設

大企業・大資産家への減税


       
(注)1998年度以降の10年間に行われた大企業・大資産家への減税の客年における効果。資料−国税庁の統計データなどから算出。07年は見込額。(2009年2月20日しんぶん赤旗」より)
−地方の切り捨て−
激減する交付税・農業破壊
・2004年「三位一体改革」断行、以後3年間で、国庫補助負担金は4.7兆円、地方交付税は5.1兆円削減。一方、国から地方への税源移譲はわずか3兆円。差し引き、6.8兆円のマイナス。

輸入自由化の促進による農業破壊、大型店の進出による商店街の「シャッター通り」化など、地方の経済の冷え込み。

2.生駒市の福祉施策の推移

昭和46年(1971年)に生駒市が誕生したときには、人口は約37,000人でしたが、人口増加が続き、現在(2011年4月1日)では、約119,000人となっています。
生駒市は、近畿で、芦屋、箕面に次ぐ「豊かな」市といわれ、市独自の福祉施策も実施され、奈良2006年度の高齢者福祉ランキングが全国763市区中35位の高水準となっていました。
 
県内各市の福祉施策実施状況(2007年度)


      (2008年6月15日付け「広報いこま」より)

生駒市ハートフルプラン」は、市の福祉施策の総合計画ともいえるもので、「高齢者施策全般」「障がい者施策」「児童福祉施策」「地域福祉施策全般」の4つの分野で構成されています。2000年に初めて策定され、以後3年ごとに「ハートフルプラン委員会」の提言を受けて見直しを行ってきています。
2008年に第4期(2009-2011年度)計画に向けて「ハートフルプラン委員会」の答申が出され、それに基づいて様々な福祉施策の廃止や見直しがされました。

この答申が出された背景として、次のようなことが挙げられています。
(2008.6.15 広報いこま)
① 高齢者(65歳以上)の増加・・2000−2007年:約6300人増(人口は約2500人増)
2007年の高齢化率(全人口に占める65歳以上の人口の割合):18.8%
(全国:21.6%)
② 福祉経費の増大
        2000年度(介護保険制度施行) 2006年度
(高齢者福祉)     28億円           57億円
(障害者福祉)     4億円           8.5億円 (全て概数)

③ 財政: 個人住民税:勤労世代が横ばい又は減少により、増加は見込めない。
  国からの地方交付税などの増額も見込めない。
      
④ 歳出削減策:
a) 行財政改革(事業や補助金の見直し、入札制度の改革、職員数の削減)
b) 福祉施策の見直し
        

福祉施策の見直しの基本的な考え方は次のことがいわれています。
見直しの対象外とする事業
介護保険サービスや障がい者自立支援サービスのように国の施策として法律で規定され、全国統一的な基準で実施されている事業
日々の生活のセーフティーネットとして機能している事業
検討に当たっての考え方
a.「既得権」「感情論」で議論するのではなく、あくまで全市民的立場から客観的に検討する。
b. 福祉は公的サービスですべてを賄うべきものではなく、「自助」「共助」「公助」のバランスを考える。
c. 行政が行う「必要性」、事業実施による「有効性」、実施内容の「妥当性」の視点から、各事業の方向性を検討する。

このような、行革(アクションプラン)とハートフルプラン(福祉関係)によって、削減されたものは、以下のとおりです。(2006−2010年度)
A. 行革(アクションプラン)による削減         (単位:億円)

削減項目     
職員数削減 1. 05(2006年度)1. 20(2007年度)1. 76(2008年度)2. 60(2009年度)6. 48(2010年度)
事務事業の見直し 0. 78(2006年度)0. 96(2007年度)0. 56(2008年度)1. 14(2009年度)
補助金の見直し 0. 46(2006年度)0. 41(2007年度)0. 44(2008年度)0. 35(2009年度)
随意契約の見直し 0. 03(2007年度)0. 37(2008年度)0. 23(2009年度)
委託業務の効率化 0. 25(2008年度)
各種手当ての見直し 0. 15(2007年度)
付属機関の見直し 0. 05(2008年度)
外郭団体の見直し 3. 52(2008年度)
公債費の繰上償還 0. 99(2008年度)
民間指定管理導入 0. 69(2009年度)
使用料の見直し 0. 33(2008年度)
広告収入の見直し 0. 03(2009年度)



B. ハートフルプランの削減 (単位:千円)
見直し対象事業   
軽度生活援助事業    392(2008年度) 328(2009年度)  
訪問理美容サービス 108(2007年度) 298(2009年度)
特定移動支援者福祉金 2,390(2009年度)
要介護福祉金 3,630(2008年度) 11,160(2009年度)
特定疾患者見舞金 4,190(2009年度)
食の自立支援配食サービス 5,588(2008年度) 1,778(2009年度)

高齢者交通費助成               66,343(2009年度)
障がい者交通費助成 998(2007年度) 7,798(2009年度)

一方、新規に行われた事業は以下のようなものがあります。国や県からの補助金交付金が使われたものも含みます。
   
C. 主な新規事業(2002−2010年度)


教育・保育関係
小中学校校舎耐震改修事業・改築工事 
保育園・幼稚園新増設事業補助
学童保育所で19時まで延長保育実施
私立保育所の重度障がい児に対する保育の充実
幼稚園3歳児待機園児の解消に向けた準備
小学1・2年生30人学級の実施
小中学校全普通教室への扇風機の設置
高校総体(2009近畿まほろば総体)の開催


医療・福祉関係  
基本健康診査で生活機能等の検診項目を追加
特定健康診査の実施
3種類ワクチン接種を開始
特別養護老人ホーム建設補助
認知症高齢者グループホームスプリンクラー整備
3歳未満一人あたり月額20,000円支給
子ども手当の支給       

(ゴミ処理関係、施設整備関係、制度整備関係などは省きます。) 

* 上記A, B, Cの表は、市民団体「市民の輪いこま」発行「市民講座 第4回レポート (2011.11.27付け)」から転用させていただきました。財政課にも確認しました。
    
2011年度を含めると、特徴的な施策として次のようなものが挙げられます。

① 削減/拡充された主な施策
削減:高齢者交通費助成(15,000円を10,000円に)6,630万円
   自主学習グループの施設使用料減免廃止  4,930万円
拡充:待機児童解消へ私立保育園助成(5億2,723万円)
   コミュニティーバスの拡充(年間約1,700万円補助)

* この間の最もおおきなプロジェクトとして、市立病院の建設があります。
2006−2010年度までに、基本設計費、事務費など53,744千円が使われ、2011年5月臨時議会で、実施設計、用地造成工事費など約2,400万円を可決し、現在設計が進められています。(指定管理者である医療法人徳州会について、暴力団との関係が問題になっていましたが、本年2月14日警察に照会した結果、全役員について「排除措置対象者に該当しない」との回答がありました。)

② 経費削減のトップは職員の削減
正規職員数:2006年−979人・・・2011年−861人 (118人減)
臨時職員数:2006年−312人・・・2011年−411人( 99人増)
現在の職員構成: 臨時職員が正規職員の約半数(48%)に達しています。
            (職員3人に1人は臨時職員)

人件費削減額(2007−2010年):約12億円(臨時職員人件費増:約1億円)
2012年度当初には840人以下にする目標を掲げています。
  




3.生駒市の財政状況
これらの行政改革や福祉削減の理由とされる財政状況を見ておきます。

経常収支比率
2006年度98.0%   2007年度98.8% 2008年度96.4% 2009年95.5%度 2010年度90.2%

* 2010年度に大きく改善されたことについて、市は「政権交代により地方交付税と臨時財政対策費が増額(15.5億円)されたことが大きく寄与したもので一時的な現象である」としています。(「2012年度予算編成方針について」より)

財政健全度(次の3指標から見る)(2010年度)
① 財政力指数(必要経費に対して市の自主的な収入の割合):0.81
② 実質公債費比率(標準財政規模に占める毎年の元金利子返済額):4.5%
(18%を超えると借入れのときに県の指導を受ける必要が生じる)
③ 将来負担比率(標準財政規模に占める将来負担すべき負債の割合):-31.5%   
奈良県内全市のなかで、いずれもトップ。
中でも将来負担比率がマイナスであるのは、生駒市のみ。

* 「北部地域整備促進基金」について
 主に高山第2工区の開発のために積み立てられてきた基金であるが、この開発計画は2010年に奈良県知事によって事実上の撤退が表明され、生駒市も事実上中止した状態になっています。この基金は、2010年度で26.74億円(2011年9月補正で2.2億円使用)あり、この基金の使い道は今後の課題となります。